牌を握るのは久々だったが、さほど違和感無くゲームに馴染む事ができた。
三つ子の魂なんとやら。
箸の使い方や自転車の乗り方をいつ習得したのかを覚えていないように
僕の奥に染みついた麻雀は、意識せずとも体に摸打を再現させる。
昔に比べれば、雀荘に足を運ぶ回数は激減している。
それでも時々こうして卓に座る理由は、牌に触ったりお店の空気を吸う為かもしれない。
紫煙によって残り湯のように揺らぐ店内の光。
牌や点棒が奏でる軽い音。合いの手のような発声。
これが僕の原風景。
結局は自分が生まれ育った環境へ回帰したがるものなのか。
下家の後ろにある空き卓で、メンバーが卓掃をはじめた。
こちらの卓上はそれなりに切迫した状況なのだが、ついメンバーの手元を追ってしまう。
まだまだ拙い手つき。他の卓への気配りもできていない。
それでもそれは僕が持つ、ある卓掃士の記憶を
意識の表層まで引き上げるスイッチになった。
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