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金とアルコールと金

※営業やってた頃に書いた文章です。



昨日は接待だった。

営業という職種に就いているので顧客と酒の席を共にする事は多いのだが、未だに慣れない。






普段行かないような店で気を使いながら飲まなければいけないというのもあるが
「会社の経費で飲んでいる」
という事に釈然としていないのが大きい。

交際費と実績と対比させて費用対効果を分析するようなシステムが無いので
実際にどれだけの効果があったかがわかりにくいからだ。
(また、明らかに交際費を無駄に使った場合でもペナルティは無い。時々恐ろしくなる)

とは言いつつも
人間関係を円滑にする為にアルコールを飲み、共に遊ぶ事が効果的なのは体感していた。
現在の私の上司はとにかく顧客に会いまくる営業方法を採っており
夜はほぼ毎日銀座や赤坂で顧客と飲んでいる。
結果、濃密な人間関係を構築し、その延長で高額な受注を取って来ている。
彼が辣腕と呼ばれる理由の半分は「夜の営業」の効果であろう。

社会のシステムがスマートに効率化されてきていると思いきや
現場ではこんな昔ながらの泥臭い事が行われている。

その上司曰く

「客と飲む時は、明確な目的意識を持って臨め。漠然と『仲良くなりたい』とか、『恩を売ろう』とか思って飲んでいても、意味が無い。『○○の受注をぶん取る』『あの計画のキーマンを突き止める』くらいには動機を具体化させないといけない」

との事。
なるほど、彼は飲んだ相手からは必ず利益を引き出している。
彼の金の使い方は企業的に見て正しいだろう。

そんな事を考えていたらふと思い出した事がある。


私は10代の頃Jというホストクラブで働いていた時期がある。
ホストとしてではない。
経営に携わる側として店の営業や経理のサポートをしつつ、ボーイとして店に出たりもした。
客とホストの欲望を剥き出しにした営みを目の当たりにして
「ああ、結局人間も動物なんだな」
と達観したつもりになったりしていた。

社長はそのJの上客の1人だった。

その辺りの盛り場一帯の風俗店を経営していて
本業は土建屋というとても胡散臭い男である。
が、人望は厚く、ワンマンでありながら彼の悪い噂は聞いた事が無かった。
社長は頻繁に風俗店の営業が終わった後、店の女の子を連れてJを訪れていた。
気前良く女の子に遊ばせて会計は全て自分のカードで済ませる。

「お前ら飲みすぎだよ~」

とおどけながら、サインする姿を見て、
「従業員の機嫌取りも大変だなぁ」
と無邪気に感じていた。


ある日

開店前の店で掃除をしていると社長が1人でやって来た。
店長に用事があったらしいのだがちょうど出掛けてしまっていた。

「すぐ帰ってくると思いますけど、お待ちになりますか?」
「うん、ちょっと座らせて貰うね」

事務所の応接に通して、お茶を出す。
1人にする訳にもいかず無難な世間話をしていた。

「社長って良い人ッスよね~、いつも店の女の子に奢ってあげてて。けっこうな金額使ってますよね~」

見え透いたおべっかだが、褒められて悪い気がする人間はいない。
チンピラの社交術トークだ。
だが、社長は失笑しながらこう切り替えしてきた。

「巷ちゃんは何にもわかってないねぇ。まぁ若いから仕方ないけど」

自尊心ばかり高い私は、カチンときた。
社長が愉快そうに笑った。

「ごめんごめん、そんなに怒んなよ。別にケンカ売ってる訳じゃないんだからさ。それに、普通はわからない方がいいんだよ」

「いいかい?ウチの店みたいな風俗では色々な娘が働いてる。その中でも、やっぱ店として良い悪いがあるんだよね。どんな娘が良いと思う?」

「やっぱ、人気がある人じゃないですか?指名がいっぱい取れるとか」

「う~ん、惜しいけどハズレ。正解は『真面目な娘』。この業界にいる奴らってのは大抵普通の事ができないんだ。遅刻・無断欠勤は当たり前。客とトラブルを起こす奴、借金残して飛んじゃう奴もざらだ。でも、ちゃんとしている娘もいる。普通の仕事もできるんだけど、敢えて風俗に来ているような娘だ。そういう子には大抵『事情』がある」

「事情?」

「まぁ九分九厘カネだわな。止むに止まれぬ事があって風俗で働いている。そういう娘って、雇う側としては都合が良いんだわ。計画的に使えるしリスクが少ない。ただ、問題がある」

「真面目だから、地味目で客が付かないとか?」

「違う違うw むしろ地味目の方が人気あったりする。そうじゃなくて、そういう娘って真面目だからコツコツお金貯めてある程度の額が貯まったら辞めちゃうんだよね。『事情』が解決したら、さっさと普通の仕事に戻っちゃうんだ」

「まぁ、それはそうでしょうね。お世辞にも良い仕事とは言えないし、そんなに長く出来るもんじゃないし」

「それは困る。だから、そこでホストさ。 ホストクラブで遊ぶ事を覚えさせて、『事情』がなかなか解決しないようにしてやる。風俗のストレスは真面目な娘でも耐えるのがキツイんだろうね。結構ハマる娘が多いよ。ここで遊ばせるのは、俺にとっては経営戦略の一つなのさ」

なるほど、そういう事か。
社長は明確な目的を持って金を使っていたのだ。
人の良さや従業員のケアの為では無かった。

世の中一筋縄では行かないものだ。
10代の私は、少し大人になった。

「それでも、俺は『良い人』かな?巷ちゃん?」

悪戯に微笑みながら社長が聞いてきた。

この人は間違いなく悪人だ。
だが、自分のやっている事をわかっているし、正当化もしない。
私のようなぺーぺーにも社会の仕組みをわかりやすく教えてくれた。
その笑顔に滲む愛嬌は、ピカレスクのヒーローのような魅力を感じさせる。

「ええ、『イイ』人だと思いますよ?」

『イイ』にアクセントを込めて言い返してみた。
社長が豪快に笑った。
私も笑う。

帰って来た店長が、不審そうに私達を見比べた。



社長がやっていた事も、今の上司がやっている事も
結局は同じ事なんだろう。
タダより怖いものは無いし、意味の無いタダ酒も無い。

海千山千の連中と渡り合うのにはまだまだ勉強が足りなさそうだ。


家に帰り、妻が差し出してくれた缶ビールの蓋を開ける。
飲み下しながら、戯れに聞いてみた。

「これはどういう意図の酒なの?」
「水分とカロリー補給。あ、ちなみにご飯無いから」


こんな原理的なアルコールの使い方も他に無いだろうと思いつつ
空腹のまま寝床に就いた
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非公開コメント

No title

久しぶりに読んだケド勉強になりますわww

社長の考えに納得
巷さん、次の記事更新が楽しみです

No title

>カントリー
世の中一筋縄ではいかんよなぁ
ずっと勉強しないとね。
>フライデー雀士さん
人間としてはわかりませんが
経営者としては、正しい考え方だと思いますです。
そろそろ更新が途絶える時期に差しかかってますw
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巷の打ち手

Author:巷の打ち手
その名の通り、その辺にいる打ち手です。

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